そんな恋のはじまりを期待する人は大勢いるでしょうが、めったに現実で起こるものではありませんよね。
むしろ昨今は直接の出会いよりも、スマホの「マッチングアプリ」を使った恋愛が多くなっています。
ただ「マッチングアプリで今の恋人と出会った」と言うことに、少し引け目を感じる人は多いかもしれません。
それはマッチングアプリで始まった恋愛関係が、対面で始まった恋愛より下に見られる風潮があったからです。
しかし米ベイラー大学(Baylor University)の最新調査により、マッチングアプリで始まった恋愛関係は対面で始まった恋愛関係と比べて、質的に差がないことが明らかになりました。
もうマッチングアプリは邪道ではないようです。
研究の詳細は2024年10月12日付で学術誌『Social Sciences』に掲載されています。
目次
- マッチングアプリでも質の高い恋愛関係が築ける
- マッチングアプリで充実した恋がはじまる理由とは?
マッチングアプリでも質の高い恋愛関係が築ける
近年、マッチングアプリは社会的に受け入れられ、世の中に浸透しています。
皆さんもおそらく、様々なマッチングアプリの広告を目にしたことがあるように、人気が高まっており、恋愛パートナーと出会う一般的な方法の一つになりつつあります。
しかしこの傾向にも関わらず、オンライン上で始まる恋愛関係は歴史的に懐疑の目に晒されてきました(※)。
(※ 一昔前はマッチングアプリという正式なサービスはなく、パソコン上の無料掲示板や出会い系サイトを使用していた)
マッチングアプリで相手を探すことは何となく安易であったり、感情的な繋がりよりも肉体的な魅力を優先したり、プロフィールを誤魔化している可能性があったり、あるいは相手が危険人物である恐れもあると考えられてきた背景があります。
利用者の中には「マッチングアプリで今の彼氏/彼女と出会ったと言うのが恥ずかしいから、友人の紹介で会ったと言うようにしている」という方も少なくないかもしれません。
その一方で、確実にマッチングアプリの利用者が増えていることは確かなことです。
研究主任のミッキー・ラングレー(Mickey Langlais)氏は「この研究を始めたときはマッチングアプリに対してネガティブなイメージを持っていましたが、多くの学生や友人がこれらのプラットフォームでパートナーと出会っていました」と指摘。
その上で「対面で直接出会ったカップルと比べて、マッチングアプリで始まった恋愛関係が本当に質的に劣るのかどうかを調べようと思いました」と話します。
今回の研究では、アメリカ南部に住む大学生233名を対象としました。
参加者は全員18歳以上で、恋愛経験に関するオンライン調査に回答してもらっています。
その中で、現在進行形で恋愛パートナーがいる参加者は120名であり、すでに別れたものの過去に恋愛パートナーがいた参加者は169名でした。
また現在交際中の120名のうち、86名は対面で直接的にパートナーと出会っており、34名はマッチングアプリでパートナーと知り合っています。
他方で、過去に恋愛パートナーがいた169名のうち、140名は対面で直接的にパートナーと出会っており、29名はマッチングアプリで出会っていました。
そして恋愛関係の質を測定するため、参加者には恋愛パートナーとの親密度や信頼性、恋愛関係の満足感などを評価する心理測定ツールである「Perceived Relationship Quality Components Inventory(PRQC)」という質問票に回答してもらっています。
ここで参加者は各項目について1〜7段階の評価をし、スコアが高いほど恋愛関係の質が高いことを示します。
データ分析の結果、マッチングアプリで始まった恋愛関係は、対面で直接始まった恋愛関係と比較して、恋愛の質に有意差は見られないことが判明したのです。
現在交際中のグループも過去に交際していたグループもともに、マッチングアプリで知り合った参加者たちは、対面で直接出会った参加者と同じように「恋愛関係に対して高い満足度や充実感があった」と答えていました。
つまり、マッチングアプリで始まった恋愛関係だからといって、質的に劣ることはなかったのです。
では、なぜマッチングアプリでも質の高い恋愛関係が築けるようになったと考えられるのでしょうか?
マッチングアプリで充実した恋がはじまる理由とは?
ラングレー氏らはオンライン上での出会いでも充実した恋愛関係を築けるようになった大きな要因の一つとして、マッチングアプリが恋愛パートナーを見つけるための正式なツールとして一般化し、アプリへの偏見が薄れてきていることを指摘します。
先ほども少し言及したように、一昔前の出会い系サイトは掲示板などを利用したもので、相手の素性もよくわからなかったため、危険な出来事も起きやすい状況にありました。
しかし昨今の「マッチングアプリ」は、本人確認や料金支払いを制度として組み込むなど、信頼性・安全性の高いアプリも増えているといいます。
「マッチングアプリに関する否定的な印象は薄れつつあり、その結果、多くの人がオンラインで恋愛を始めることを恥ずかしいものと思わなくなっている可能性がある」とラングレー氏は指摘します。
またマッチングアプリを利用する人々は、そもそも最初から「恋人を見つけたい」との意欲が高い人たちです。
そのため、オンラインで出会った男女は双方が恋愛への心構えがすでにできており、充実したデートや恋愛関係を育みやすい状態にあるのも要因の一つでしょう。
さらにオンラインでの恋人探しでは、共通の趣味や価値観を持つ相手にアプローチをしますから、性格的にも合いやすく、それが恋愛関係の満足度の高さへとつながりやすいのだと思われます。
これらを踏まえると、むしろマッチングアプリの方が対面で直接出会う場合よりも有利な点はたくさんあると考えられるのです。
この結果を受けて、ラングレー氏は「オンライン上で始まった恋愛関係が、対面で開始された恋愛関係よりも質的に劣るという従来の考えに異議を唱えるものである」と話しました。
とはいえ、マッチングアプリによる出会いにトラブルがまったく無くなったとは言えません。
手軽な出会い方に対して安易な肉体関係や、金銭を介した関係を求める人も依然多く存在し、マッチングアプリが犯罪や性感染症拡大の温床になっているという批判もあります。
マッチングアプリによる出会いに眉をひそめる人たちは、主にこうした問題を懸念してのものでしょう。
今回の報告は、あくまでマッチングアプリで真面目に恋愛の相手を探して恋人関係を築けた場合のその後を調査したものなので、マッチングアプリの危険性も十分に理解していないと思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
また今回の調査は大学生のみを対象としているため、同じ結果を他の年齢や社会集団にも一般化することはまだできていません。
チームは次のステップとして、あらゆる年齢や職業にも同様の傾向が見られるかどうかを調べていく予定です。
「恋愛の質」というと難しそうに聞こえるかもしれませんが、要するに「恋人とどれだけいい関係を築けているか」を測るものです。研究結果は、「対面で出会ったカップルも、マッチングアプリで出会ったカップルも、どちらも満足できる恋愛をしている」ということを示しています。
これを知れば、マッチングアプリを使った恋愛に引け目を感じる必要はありませんね!
Relationships formed on dating apps are as strong as those formed in person, study finds
元論文
Dating Applications versus Meeting Face-to-Face: What Is Better for Romantic Relationship Quality?
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
ナゾロジー 編集部
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